横浜マラソン完走を目指し、ランニングに挑戦中の元オリンピアン・持田早智さん。
トレーニング開始から約3ヶ月。800mで息を切らしていたスタートから、今では90分を大きく崩れることなく走れるまでになりました。
ここからは、100分、120分と少しずつ走る時間を伸ばし、よりフルマラソン本番に近いトレーニングへと進んでいきます。
そこで大切になるのが、単に「長く走る」ことではなく、自分に合ったペースで、最後まで走り続けることです。
なぜ「何km」ではなく「何分」で走るのか。
なぜ、楽に感じてもペースを上げすぎてはいけないのか。
フルマラソンを目指すランナーに知ってほしい、長時間走の考え方について、ランニングマスターの髙橋良コーチに聞きました。
「何km」ではなく「何分」で走る理由

ランニングを始めると、
「今日は5km走ろう」
「10km走れるようになりたい」
と、距離を目標にする方が多いと思います。
もちろん距離も大切です。
ただ、フルマラソンに向けて長く走れる身体をつくるという目的で考えると、僕は「時間」を目標にすることをおすすめしています。
一番の理由は、オーバーペースになりにくいからです。
例えば、「あと2km」と言われたら、
「少し速く走れば早く終わる」
と思いますよね。
すると、知らないうちにペースを上げてしまうことがあります。
でも「あと10分」であれば、速く走っても、ゆっくり走っても10分です。
自分にちょうどいい強度を保ちながら、必要な運動量を確保しやすくなります。
フルマラソンに向けたトレーニングでは、「どれだけ速く終わらせたか」ではなく、決めた時間を、自分に合った強度で動き続けられたかが大切です。
同じ「1km6分」でも、身体への負担は同じではない
では、「自分に合った強度」はどう判断すればいいのでしょうか。
一つの物差しになるのが、心拍数です。
特に夏は分かりやすいですね。
例えば持田さんの場合、夜に気温が下がってから走った時と、暑い日中に走った時では、同じ1km6分程度のペースでも心拍数が違います。
同じスピードで走っていても、暑い日中の方が心拍数が高い。
つまり、身体にかかっている負担は大きいということです。
だから、
「いつも1km6分で走っているから、今日も6分」
と、スピードだけで考えるのではなく、
今日はこのペースで、自分の身体にはどのくらいの負荷がかかっているのか
を見ることが大切です。
フルマラソンに向けた練習では、「時間」と「運動強度」の両方を意識してみてください。
初心者ほど「楽だから、もう少し速く」が危ない
ランニング初心者の方によくあるのが、走り始めに、
「思ったより楽だな」
「もう少し速くてもいけそう」
とペースを上げてしまうことです。
人は、短い時間であれば意外と頑張れます。
そのため、自分が瞬間的に出せる力を基準にして、
「このくらいなら最後までいけそう」
と錯覚してしまうことがあります。
でもフルマラソンでは、その小さなオーバーペースが後半になって大きく返ってきます。
実際、前半にペースを上げすぎて、30km以降に歩いてしまうランナーは少なくありません。
これは本番だけではなく、普段の練習でも同じです。
長時間走に取り組む時は、
「こんなに遅くていいのかな?」
と思うくらいからスタートしても構いません。
大丈夫だと思っても、すぐにペースを上げない。
最後まで余裕があったら、最後のところだけ少し上げる。
それくらいの感覚で十分です。
基本は「ゆっくりジョギング」と「ビルドアップ」

では、オーバーペースにならず、自分のペースを身につけるためには、どんな練習をすればよいのでしょうか。
僕が一般のファンランナーの方におすすめしている基本は、大きく二つです。
一つは、とにかく楽に走る、ゆっくりとしたジョギング。
もう一つは、徐々にペースを上げていくビルドアップ走です。
例えば60分走ると決めた時に、
「最初の10分より、最後の10分の方が遅くならないようにする」
というイメージです。
最初から頑張るのではなく、最後まで余裕を残しながら走り、後半に少しペースを上げる。
そのためには、
「最初はどのくらい抑えればいいのか」
「どんなフォームなら楽に走れるのか」
「どこから少し上げていけるのか」
と、自分の身体を考えながら走る必要があります。
一方で、ゆっくりジョギングの日は、難しく考えず「いかに楽に走れるか」を大切にする。
この二つを組み合わせながら、自分に合った走り方を身につけていくのが基本です。
90分を超えて、初めて見えてくることがある
持田さんも、ここから90分、100分、120分と走る時間を伸ばしていきます。
なぜ段階的に時間を増やすのか。
それは、よりマラソン本番の感覚に近づいていくためです。
長い時間動いていると、
「今までと同じ走り方なのに、だんだん苦しくなってきた」
「このままのペースでは最後までもたないかもしれない」
という感覚が少しずつ出てきます。
エネルギーが少なくなっていく感覚も、その一つです。
こうしたことは、短い時間のランニングだけでは、なかなか経験できません。
そして大事なのは、苦しくなった時に、
「もっと頑張る」
だけではありません。
どうすればエネルギーのロスを少なくできるのか。
少し腕を振った方が楽なのか。
フォームをどう意識すると走りやすいのか。
そんなふうに、疲れてきた時の自分なりの立て直し方を探すことも、長時間走の大切な目的です。
補給も「本番で初めて」ではなく、練習で試す
走る時間が長くなると、水分やエネルギー補給も重要になってきます。
ただ、
「何分おきに取ればいい」
「この補給食なら絶対大丈夫」
という、すべての人に共通する一つの正解があるわけではありません。
人によって合うものは違います。
だから長時間走は、自分に合った補給方法を試すリハーサルにもなります。
- 走る前に何を食べたら調子が良かったのか。
- 走っている途中に、どのタイミングで補給すると良かったのか。
- 逆に、うまくいかなかったことは何だったのか。
一度試して、合わなかったら変えてみる。
また次の長時間走で試してみる。
そうやって、
「自分の場合は、このパターンなら走りやすい」
を本番までに見つけていくことが大切です。
一人で走る、仲間と走る、レースで走る。それぞれ違う経験

持田さんには、9月にハーフマラソンへのチャレンジも予定しています。
これにも理由があります。
- 長い時間を一人で走ること。
- 仲間と一緒に走ること。
- そして、実際の大会で走ること。
この三つは、それぞれ違う経験だからです。
仲間と走れば、人のリズムに合わせることで思った以上に楽に走れることもあります。
一方、レースに出れば、会場の雰囲気があります。
スタート前の準備やトイレなど、実際に参加して初めて分かることもあります。
そしてスタートすると、周りの人がみんな速そうに見えて、
「自分もいけるかも」
と、分かっていてもオーバーペースになってしまうことがあります。
本番で初めてそれを経験すると、焦ってしまいます。
だから、フルマラソンの前に一度大会へ出ておく。
いわば模擬レースとして経験しておくことにも大きな意味があります。
長時間走で大切なのは「最後までペースダウンしないこと」
これから秋のフルマラソンに向けて長時間走に挑戦する方に、まず意識してほしいことがあります。
それは、後半になるほどペースが落ち続ける走り方をしないこと。
「こんなにゆっくりでいいの?」
と思うくらいでスタートする。
楽だと思っても、すぐに上げない。
そして、本当に余裕があれば最後に少し上げる。
まずはそれで十分です。
長時間走は、ただ距離や時間を増やすためのトレーニングではありません。
- 自分にとって楽なペースを知る。
- 疲れた時の身体の変化を知る。
- 補給を試す。
- フォームの立て直し方を探す。
- そして、本番で慌てないための経験を増やす。
そうやって少しずつ、「自分のマラソンの走り方」をつくっていく時間です。
速く走ることより、最後まで自分のペースを保つこと。
フルマラソンを目指す方は、ぜひそこから意識してみてください。


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投稿を表示10分15分走るとしてもオーバーペースにしないって大切だと思ってます。自分の過去を振り返っても歳をとると昔の記憶で頑張ってしまいがち。特に走りはじめは無理して膝を痛めたりするので。