はじめに
「走るのは苦手なんです」
そんな言葉から始まった、
元競泳日本代表・持田早智さんのスマートランチャレンジ。
最初は800mからのスタートでした。
仕事や子育ての合間を縫って練習を重ね、
少しずつ走れる距離を伸ばしてきた約半年間。
髙橋良コーチとともに準備を進め、
ついに10月25日(日)、
横浜マラソン2026で初めての42.195kmに挑みました!
少しずつ走れる距離を伸ばしてきた約半年間。
髙橋良コーチとともに準備を進め、
ついに10月25日(日)、
横浜マラソン2026で初めての42.195kmに挑みました!
結果は、4時間55分42秒で見事完走!🎉
ところが、レース当日は予想以上の雨と風。
大勢のランナーによる混雑、
果てしなく続く高速道路、
そして初めて経験する身体の限界……。
大会後のインタビューで、
持田さんはこんなことを話してくれました。
「普通に歩けることを幸せだと感じました(笑)」
果たして、初めてのフルマラソンはどんな一日だったのでしょうか。
連載最終回となる今回は、
持田さん本人と、半年間の挑戦を支えた髙橋良コーチのお二人に、
レース当日の出来事や、
この挑戦を通じて感じたことを振り返っていただきました。
持田さん本人と、半年間の挑戦を支えた髙橋良コーチのお二人に、
レース当日の出来事や、
この挑戦を通じて感じたことを振り返っていただきました。
「こんなにつらいなんて!」想像とは違った42.195km
持田さん:
いや、もう本当に大変でした!(笑)
まず、スタートするまでが長かったんです。
着替えた場所からスタート地点までかなり歩いて、
号砲が鳴ってからも、
私が実際に走り始めたのは25分後くらい。
号砲が鳴ってからも、
私が実際に走り始めたのは25分後くらい。
「いよいよ始まる!」というワクワクよりも、
「ああ、ついに始まっちゃう……」という気持ちでした。
「ああ、ついに始まっちゃう……」という気持ちでした。
しかも、走り始めたらものすごい人混みで。
通勤ラッシュの駅のホームみたいな状態で、
なかなか自分のペースで走れないんですよ。
なかなか自分のペースで走れないんですよ。
髙橋コーチとは最初、
1kmあたり6分15〜20秒くらいで入ろうと話していたんですけど、
そんなペースでは走れない状況でした。
ただ、人の間を縫って走るのも体力を使いますし、
今回は完走が目標だったので、
無理に抜かさず流れに乗ることにしました。
10kmくらい走れば少し空いてくるかなと思ったんですけど、
結局、周りを気にせず走れるようになったのは20kmくらいから。
フルマラソンの半分近くを、
人混みの中で走っていた感じです。
人混みの中で走っていた感じです。
そして、ようやく走りやすくなったと思ったら、
今度は高速道路が待っていました。
23kmくらいから36kmくらいまで、
ずーっと高速道路なんです。
沿道の応援もなくて、見晴らしがいいから、
はるか先までランナーが続いているのが見えるんですよ。
はるか先までランナーが続いているのが見えるんですよ。
しかも、遠くに小さくランドマークタワーが見えるんです。
「あそこまで戻るのか……」
もう、絶望でした(笑)。
雨で靴も靴下もびしょびしょ。
高速道路は路面が傾いているところもあって、
足の裏がどんどん痛くなってきて。
28kmくらいで時計を見たら、
走り始めてから3時間が経っていたんです。
それを見た瞬間、
「えっ、私もう3時間も走ってるの!?」って。
「えっ、私もう3時間も走ってるの!?」って。
そこから一気に足の痛みを意識するようになってしまって。
熱っぽいと思って体温を測ったら39度あって、
急にしんどくなることってあるじゃないですか。
あれと同じ感覚でした。
32〜33kmくらいの給水所では、
初めてすぐに走り出せなくなりました。
飲み物を飲んで、
補給食を食べて、
100mくらい歩いたんですけど、
もう走れない。
そのとき、落としたイヤホンを拾おうとかがんだら、
膝がガクガクッとなって。
「あ、これ、止まったら終わるやつだ」
そう思って、何とかもう一度走り出しました。
あそこが一番つらかったですね。

「気持ちだぞ!」最後の5kmを走り切った理由
持田さん:
37kmくらいのところで、
髙橋コーチと上司の土屋さんが応援してくれていたんです。
髙橋コーチと上司の土屋さんが応援してくれていたんです。
そこにたどり着くまでが、本当にしんどくて。
周りのランナーからは
「もうここまで来たら歩いてもゴールできるよね」
という会話も聞こえてきて。
実際、私も時間的には歩いても完走できそうだったので、
「もう歩こうかな」って思ったんですよ。
でも、とりあえず髙橋コーチたちがいるところまでは走ろうと思って。
やっと見つけて、
「もうここまで頑張ったから、いいかな」
と思ったら、一緒に応援してくれていた上司の土屋さんから、
「おい、気持ちだぞ!」
って声をかけられたんです。
それを聞いて、
「ここで気持ちで負けるのは悔しい!」って(笑)。
そこからは一度も止まらず、
最後まで走りました。
でも、正直に言うと、
最後の5kmはずっと自分に怒っていました。
「なんで私、フルマラソンを走るなんて言い出したんだろう!」って。
もっと感極まって、
涙を流しながらゴールするような場面を想像していたんですけど、
全然そんなことはなくて(笑)。
それでも、ゴールしたときには、
たぶん自分で「よかったー!」って言っていたと思います。
ちゃんと、ここまで帰ってこられてよかった。
そんな気持ちでした。

コーチが見ていた、もうひとつの42.195km
ここで、沿道から持田さんの走りを見守っていた髙橋コーチにも、レースを振り返っていただきました。
髙橋コーチ:
結果としては、ある意味、
想定していたとおりだったと思います。
コンディションがよければ4時間半くらい、
5時間以内には帰ってくるだろうと考えていました。
5時間以内には帰ってくるだろうと考えていました。
実際、持田さんは自分にできることをしっかりやって、
最後まで走り切ってくれました。
想定外だったのは、前半の混雑ですね。
沿道で見ていても、あれだけ人が多くて道幅も狭いと、
思うようにペースを上げられないだろうなと感じました。
思うようにペースを上げられないだろうなと感じました。
ただ、結果的には、それが後半にプラスに働いた部分もあったと思います。
正直、30km以降はもう少しペースが落ちると予想していたんです。
でも、実際には後半も大きくペースを崩さず、
ほぼ同じリズムで走り続けていました。
ほぼ同じリズムで走り続けていました。
本人はものすごくつらかったと話していますが、
沿道から見ている限り、
しっかり自分をコントロールして走っていたんですよ。
沿道から見ている限り、
しっかり自分をコントロールして走っていたんですよ。
だから、僕としてはとてもいいレースだったと思っています。
800mから42.195kmへ。
変わったのは、走る力だけじゃなかった
持田さん:
今回の挑戦で一番よかったと思うのは、
「できない人の気持ち」を知ることができたことかもしれません。
「できない人の気持ち」を知ることができたことかもしれません。
私は競泳をずっとやってきて、
水泳に関しては、
ある程度できる側の人間だったと思うんです。
ある程度できる側の人間だったと思うんです。
だから、子どもたちを指導するときにも、
「こうしたらできるんじゃない?」と思うことがあって。
でも、本人が「できない」と言っていることに対して、
なぜできないのか、
なかなか理解できない部分もあったんですよね。
今回、ランニングという自分の得意ではない世界に飛び込んで、
できないなりにどう工夫するか、
どう成長していくかを経験できました。
髙橋コーチも、
全部を細かく指示するのではなくて、
任せるところは任せてくれて、
大事なポイントでアドバイスをくれるんです。
自分で考えることも大切だし、
プロの意見を聞くことも大切。
その両方を、挑戦する側の立場で経験できたのは、
すごく大きかったと思います。
それから、人とのつながりも増えました。
競泳だけを続けていたら、
どうしても同じ世界の人たちとの関わりが中心になりがちです。
でも、ランニングを始めたことで、
社内でも社外でも新しい出会いがたくさんありました。
フルマラソンを走った人同士だからこそ盛り上がれる話もあるんですよね。
大会後に経験者の方々と話していたら、
その話を聞いた人から「来年、走ってみようかな」という声も出てきて。
その話を聞いた人から「来年、走ってみようかな」という声も出てきて。
スポーツって、こういうところがいいなと思いました。
髙橋コーチが感じた、持田さんの成長
髙橋コーチ:
持田さんが大きく変わったのは、
自分の身体を物差しにして、
走り方を判断できるようになったことだと思います。
自分の身体を物差しにして、
走り方を判断できるようになったことだと思います。
最初の頃は、
こちらが「そんなに速く走らなくてもいいよ」と言っても、
速いペースで走っていたこともありました。
でも、経験を重ねるうちに、
「このペースならこれくらい走れそう」
「これはちょっと無理をしすぎかもしれない」
という感覚が身についてきたんです。
それが、今回のレースでのペース配分にも生きていたと思います。
もうひとつ印象的だったのは、
忙しい中でも練習を続けていたことです。
実は、練習の回数や時間を、
半年間で極端に増やしたわけではありません。
基本的には月8〜10回程度。
練習の内容や強度を、
その時期に合わせて変えていきました。
持田さんは仕事も子育てもある中で、
先の予定を考えながら
「今日走っておかないと、次に時間が取れない」と判断して、
しっかり行動していました。
もちろん、誰もが同じようにできるわけではありません。
だからこそ、指導する側として大切にしたいのは、
その人の生活に合わせて、
続けられる方法を一緒に考えることです。
その人の生活に合わせて、
続けられる方法を一緒に考えることです。
生活を豊かにするために運動を始めたのに、
運動のために生活そのものが崩れてしまっては本末転倒ですよね。
だからこそ、その人ができる範囲で続けていくことが大切なんです。
ゼロとイチの違いって、ものすごく大きいんですよ。
イチとニの差は、もしかしたらそれほど大きくないかもしれない。
でも、ゼロのまま終わらせないことには、
大きな意味があると思っています。
イチとニの差は、もしかしたらそれほど大きくないかもしれない。
でも、ゼロのまま終わらせないことには、
大きな意味があると思っています。
今回の挑戦を通じて、その大切さを改めて感じました。
「フルマラソンはもうお腹いっぱい!」
でも、走ることは続けたい

実は、大会前のインタビューで、
持田さんはこんなことを話していました。
「42.195kmを走ることよりも、
この挑戦が終わってしまうことの方が寂しい」
この挑戦が終わってしまうことの方が寂しい」
では、実際に走り終えた今、
その気持ちはどうなったのでしょうか?
持田さん:
いや、フルマラソンはもうお腹いっぱいです!(笑)
本当に、人生でそんなに何回も経験しなくていいかなって思うくらい大変でした。
でも、ランニングは絶対に続けると思います。
42kmを走ったことで、
自分の中で5kmや10kmという距離の感覚が変わったんですよ。
自分の中で5kmや10kmという距離の感覚が変わったんですよ。
今なら、ちょっと走りに行こうと思ったときに、
5kmや10kmを走ることへのハードルが以前ほど高くないんです。
せっかく半年かけてここまで来たので、
この感覚をなくしたくないですね。
また800mからやり直すのは大変ですから(笑)。
これからは、大会に出るためだけではなくて、
日常の中で走ることを続けていきたいと思っています。
髙橋コーチ:
僕も、それでいいと思っています。
僕自身、フルマラソンをたくさん走ってきましたけど、
フルマラソンを走ることがすべてだとは思っていません。
大切なのは、
ランニングを自分の生活の中にどう取り入れていくか。
例えば、ちょっとストレスがたまったときに、
「一人の時間が欲しいから5km走ってこようかな」と思える。
「一人の時間が欲しいから5km走ってこようかな」と思える。
そんなふうに、走ることで日常に少しゆとりが生まれたり、
生活が豊かになったりするのであれば、
それが一番いいことだと思うんです。
持田さんが、これからも自分なりの形でランニングを楽しんでくれるなら、
今回の挑戦は大成功だったと思います。
ただ、フルマラソンを走った人って、
1か月くらいすると
「もう一回走ってみようかな」
と思い始めることも多いんですよね(笑)。
挑戦したからこそ、見えた世界がある
最後に、持田さんに聞いてみました。
かつての自分と同じように、
「走るのは苦手」「自分には無理かもしれない」と思っている人へ、
今ならどんな言葉をかけたいですか?
「走るのは苦手」「自分には無理かもしれない」と思っている人へ、
今ならどんな言葉をかけたいですか?
持田さん:
そうですね。
人生は一度きりなので、
興味を持ったことは何でもやってみたらいいんじゃないかなと思います。
興味を持ったことは何でもやってみたらいいんじゃないかなと思います。
私が今、フルマラソンについてあれこれ話せるのも、
実際に走ったからなんですよね。
走っていなかったら、
この大変さも、
経験した人同士で話が盛り上がる楽しさも知らなかったと思います。
新しいことに挑戦すると、
話のネタが増えるし、
人とのつながりも広がります。
そこから、また別の楽しみにつながることもある。
そうやって、人生が少しずつ豊かになっていくんじゃないかなと思います。
特に、子育てをしていると、
どうしても子どもが生活の中心になって、
自分のことは後回しになりがちです。
でも、子どもの人生は子どもの人生。
自分の人生は、自分で彩りをつけていかないといけない。
今回のランニングを通じて、そんなことを改めて感じました。
だから、これからも自分の人生に、
いろんなスパイスを加えていきたいと思っています。
私も、また何か新しいことに挑戦します!
おわりに|800mから始まった挑戦、その先へ

走ることが苦手だった持田さんが、
初めてのフルマラソンに挑戦した約半年間。
雨の中、何度も「もう走れない」と思いながら、
それでも一歩ずつ前へ進んだ42.195km。
そして、4時間55分42秒で見事完走!
その先に待っていたのは、
想像していたような感動の涙ではなく、
「もうフルマラソンはお腹いっぱい!」という、
持田さんらしい率直な言葉でした(笑)。
でも、その言葉の続きには、こんな気持ちがありました。
「ランニングは絶対に続けると思います」
最初は800mだった距離が、
5kmになり、
10kmになり、
やがて42.195kmへ。
そして、いつの間にか走ることが、
特別な挑戦から日常の楽しみへと変わり始めていました。
挑戦してみたからこそ分かったこと。
できなかったからこそ気づけたこと。
そして、新しく出会えた人や、広がった世界。
この連載が、皆さんにとっても
「ちょっと何か始めてみようかな」
と思えるきっかけになっていたら嬉しいです。
持田さん、髙橋コーチ、約半年間、本当にありがとうございました!
そして、連載を読んで応援してくださった皆さんも、ありがとうございました!🌈
スマートランチャレンジは、これにて完結。
でも、持田さんの新しい楽しみと挑戦は、まだまだ続いていきそうです😊
💬 皆さんも、ぜひコメントで教えてください!
持田さんの半年間の挑戦を振り返って、印象に残ったことはありましたか?
「ここがすごかった!」
「自分も何か始めてみたくなった」
「お疲れさま!」
など、ぜひ持田さんと髙橋コーチコーチへメッセージをお寄せください。
皆さんのコメント、お待ちしています!🌈

ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示持田さん、初フルマラソン完走おめでとうございます!
連載を拝読しながら、そっと応援していました。わたしは横浜マラソンのファンラン7kmに出ていました。フルも7kmもスタート地点から4km ぐらいまでコースが一緒でしたが、確かになかなかの混雑具合でしたね。分岐点でフルマラソン組とお別れするとき、あの集団のどこかに持田さんが走っているんだなあと思ったら、つい手を振ってしまいました笑笑
お仕事、子育てをしながらのフルマラソンは大変だったと思います。今はお腹いっぱいかもしれませんが、きっとまた、走りたいと思える日がくるんじゃないかなあと思います笑 その時は今まで以上に、存分に楽しんで走れますように♪
お疲れ様でした!!
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示チャレンジお疲れ様でした
走りに対して苦手意識あるところからフルマラソン完走までもっていく為には、色々苦労されたと思います。
子育て、家事、仕事、ラントレとやる事満載でお疲れかもなのでゆっくり身体を休めて下さい。で次のチャレンジ期待してます❗️
水泳のスキル活かして次はトライアスロン?笑
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示チャレンジお疲れ様でした!
もちださん、オリンピアンで異世界の方かと思っていましたが、マラソンや家庭と仕事との両立…自分たちと一緒なんだな…お子さんも小さいなかでやりきったの凄いっ!と連載読んでました。
横浜の高速ほんとキツいですよね💦(私も初フル横浜でした)
次のリレーマラソンレポも楽しみにしてます🏃
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示完走お疲れ様です!
素敵な髙橋コーチと二人三脚。
かっこいいです!
ハードルが高過ぎてわたしにはできないなぁ、と思いながら、
やり切れる方は、かっこいい!
持田さんも髙橋コーチもかっこいいな、と。
心のなかで応援していましたよ🎉