はじめに
横浜マラソン完走を目指し、ランニングに挑戦中の元オリンピアン・持田早智さん。
前回は、90分走を通して「何km走るか」ではなく、「自分のペースで長く走ること」の大切さに気づき始めた様子をお届けしました。
そして今回、持田さんはついに120分走に挑戦。
天候不良による二度の中止を経て、自ら「今走らないと間に合わない」と心を決め、2時間を走り切りました。
一方で、横浜マラソン本番まで残り約1ヶ月。
目標タイムも見え始め、トレーニングは「ただ長く走る」段階から、いよいよ本番を意識した準備へと変わってきています。
120分を走って分かったこと、初めてのハーフマラソンへの緊張、そして本番に向けて少しずつ戻ってきた“アスリートの感覚”。
今のリアルな気持ちを聞きました。
二度の中止を経て、「もう今走るしかない」
120分走は、本当は髙橋良コーチと走る予定だったんです。
でも天候不良で二度中止になってしまって。
もうハーフマラソンも来ちゃうし、
「今やらないと、もうできないな」と思って、心を決めて走りました。
「今やらないと、もうできないな」と思って、心を決めて走りました。
完全に一人ではなくて、最初の1時間は夫が一緒に走ってくれました。
多分、最初のペースをちゃんと抑えられたのも、人が一緒にいたからだと思います。
走り終わった直後は、
「足、パンパンすぎる。普通に歩けない(笑)」
という感じだったんですけど、次の日に起きたら意外と残っていなくて。
「あれ?思ったより大丈夫だったな」
というのが率直な感想でした。
「90分」が、もう長く感じなくなっていた
今回、一番びっくりしたのは、90分を超えた時です。
前に90分走をした時は、それ自体がすごく長い挑戦だったんですけど、今回は、
「あ、これで90分か」
くらいの感覚だったんですよ。
なんなら、前回の90分走より楽だったというか、あっという間に感じました。
自分の中での「当たり前」が、どんどん伸びてきているんだと思います。
普段、「今日は長く走ろう」と決めていない日のランニング時間も、自然と長くなってきました。
今は適当に走りに行っても、50分くらい走っていることが多いんです。
2〜3ヶ月前は30分くらい。
もっと前、走り始めた頃は15分、20分くらいだった。
そう考えると、少しずつではあるけど、基準そのものが変わってきているんですよね。
2時間を「30分×4」に分けてみた

夫は1時間で、「先帰るわ」って帰っちゃったので(笑)、
後半1時間は一人でした。
そこで、自分なりに2時間を4つに分けて走ってみたんです。
最初の30分は音楽なし。
次の30分は、そんなにアップテンポじゃない曲を片耳で聞く。
その次は両耳。
最後の30分は、ちょっとテンションが上がる曲を両耳で、音量も少し上げて。
自分なりに、2時間が間延びしないように工夫しました。
意外だったのが、最初の30分を音楽なしで走るのも結構よかったこと。
自分の呼吸も聞こえるし、周りの音も聞こえるし、落ち着いて走れる。
「やってみるもんだな」
って思いました。
「いける」と思って、ちょっと調子に乗りました(笑)
全体としては、思っていたより上手に走れたと思います。
ただ、15kmくらいから、
「意外といけるな」
と思ってしまって(笑)。
そこでちょっと早めにスパートをかけすぎました。
結果、最後に少しペースが落ちて、
「あ、行き過ぎたな」
って。
でも、そういう失敗も含めて、今の自分のペースを知る経験になったと思います。
逆に、一番メンタル的にきつかったのは6〜7kmくらいでした。
身体が限界というより、
「まだ半分も終わってないのか……」
という気持ち。
長く走る時って、前半1/3くらいが結構きついんですよね。
そこを越えると、意外と流れに乗れる。
そんな自分の特徴も、少しずつ分かってきました。
120分走っても、「もうフルいけます!」とは言えません
以前からずっと、
「5時間走り続けるってどんな世界なんだろう」
って言っていました。
今回は2時間走りました。
じゃあ、フルマラソンが見えてきたかというと……
いや、まだ半分しか走ってないんですよ(笑)。
さすがに、
「もういけますね!」
とは言えないです。
マラソン経験者の方からは、
「一人でハーフくらい走れたら、本番は周りに人もいるし走れるよ」
と言われたりもするんですけど……
まだ信じてないです、私は(笑)。
実績をちゃんと積んでから信じたいタイプなので。
今は19km走れた。
でも、そこから先はまだ未知数です。
順調ではあると思います。
でも自分には、
「そんなに舐めてかかるなよ」
って言い聞かせています。
「完走」だけだった目標が、4時間30分に変わった
最初は、本当に「フルマラソンを走り切る」が目標でした。
それなら、ペースだけ考えればもっとゆっくりでもいい。
でも、ここまでやってくると、やっぱり欲が出てくるんですよね(笑)。
髙橋良コーチと練習データを見ながら話して、今は横浜マラソンの目標を4時間30分に設定しています。
最初にトータルタイムを聞いた時は、
「早っ!」って思いました(笑)。
でも平均ペースで見ると、
「まあ、このくらいなら分かるな」
という感覚もあります。
もちろん、本番では最初から攻めるつもりはありません。
むしろ最後まで同じように走って、
最後の1kmでいろんな人をごぼう抜きしたいです(笑)。
その方が、私の気持ち的にも楽しそうじゃないですか。
100分走で一度、「エネルギー切れ」を経験しました

長く走るようになってから、食事はすごく意識するようになりました。
前日だけいいものを食べても、急に身体が出来上がるわけじゃない。
だから今は、
「走るための燃料タンクを、日頃からちゃんと作っておこう」
という感覚です。
- 米をちゃんと食べる。
- たんぱく質を取る。
- コンビニで済ませる時も、菓子パンではなくて、お弁当っぽいものを選ぶ。
アスリート時代ほど細かく管理しているわけではないですけど、以前よりは気をつけています。
実は一度、自分で100分走をした時に、途中でエネルギー切れを起こしてしまったことがありました。
走れなくなって、コンビニに駆け込んだんです。
競泳では、長くても15分くらいの種目でした。
だから「何時間も動き続ける時に、どうエネルギーを取るのか」は、私にとって完全に新しい世界。
- 何を食べるのか。
- どのくらい前に食べるのか。
- 途中で何を取るのか。
今、いろいろ試しているところです。
初めてのハーフマラソン、めちゃくちゃ緊張しています
次はいよいよハーフマラソンです。
前回、
「ハーフは絶対大丈夫」
って言ってたんですけど(笑)。
走れること自体は、大丈夫だと思っています。
でも、大会形式で走ることに関しては……
めちゃくちゃ緊張しています。
どんな人たちがいるんだろう。
プロみたいな人ばっかりだったらどうしよう。
あとは、レースって周りにつられてオーバーペースになりやすいって聞くじゃないですか。
多分、スタート前から普段より心拍数も上がると思うんです。
気持ちも高ぶって、浮き足立つと思う。
だから、走り始めてから、なるべく早く「いつもの自分」に戻せるか。
そこを一度経験しておきたいです。
今回のハーフは、本番前にできる唯一のレース形式の練習。
変に120点を狙って失敗するんじゃなくて、80点くらいでちゃんと走れたらいいなと思っています。
人がいるところで走るのが、恥ずかしかった
そういえば、走り始めた当初って、人が歩いている歩道で走るのが嫌だったんです。
わざと人がいない場所を選んでいました。
なんでそんなに嫌だったのか、今はもうよく分からないんですけど(笑)。
多分、知識もない、技術もない、これで合っているのかも分からない。
自信がなかったんだと思います。
でも今は、人がいても全然気にならない。
社内の人に会っても、水泳の話よりランニングの話をすることの方が増えました。
水泳だと、皆さんからすると私に話しかけるのに少しハードルがあるのかもしれない。
でもランニングなら、同じ目線で話せる。
飲み会でも、みんな楽しそうにランニングの話をしてくれるんですよ。
「ランナーです」って言っていいのか、まだちょっと迷いますけど。
でも、始めた頃とは明らかに変わったなと思います。
「本番、来ないでほしい」から「早く走りたい」へ
横浜マラソンまで、あと約1ヶ月。
少し前までは、
「本番、来ないでほしい」
って思っていました。
でも今は、
「早く走りたい」
って思っています。
もちろん、「楽しみ!」だけではないです。
本当に走り切れるのかな。
途中で痛くなったらどうしよう。
プレッシャーもあるし、不安もあります。
でも、それも含めて、大きなくくりで言えば「楽しみ」なんだと思います。
私にとって、本番でいい状態って、ただ楽しいだけじゃないんですよね。
プレッシャーもあって、不安もあって、でも高揚感もある。
アドレナリンが出ているような、少し高ぶった状態。
横浜マラソンのスタートラインに立つ時には、
アスリートだった頃の自分を思い出せるくらいの感覚になっていたらいいな
と思っています。
本番前の「勝負飯」は、お好み焼きです

実は私、勝負飯が決まっているんです。
お好み焼きです!
選手時代からそうで、今回も食べるつもりです。
出産前にも食べました。
私の中では、人生の節目にはお好み焼きなんですよ(笑)。
きっかけは母でした。
中学生くらいの頃、試合前に母がお好み焼きを作った時に結果が良かったらしくて。
それから母の中では、試合前のお好み焼きが“勝負飯”になっていたみたいなんです。
でも、私にプレッシャーをかけたくなかったから、ずっと言わずに作ってくれていた。
引退した後に、
「実は意図的に作ってたんだよ」
って聞いて初めて知りました。
それからは、自分でも何か大事なことがある前には、お好み焼きを食べるようにしています。
今回ももちろん食べます。
この文化は、息子にも引き継いでいきたいですね。
おわりに
15分、20分走ることから始まり、30分、50分、90分、そして120分へ。
持田さん自身が語ったように、この数ヶ月で「走ることの当たり前」は少しずつ伸びてきました。
一方で、2時間を走り切った今も、「もうフルマラソンはいける」とは言わない。
未知の距離への不安も、エネルギー切れへの心配も、初めての大会への緊張も、そのまま抱えながら本番へ近づいています。
それでも、始めた頃にあった「人前で走るのが恥ずかしい」という気持ちは、いつの間にかなくなりました。
そして、「本番が来ないでほしい」は、「早く走りたい」へ。
次はいよいよ、初めてのハーフマラソン。
横浜マラソン本番を前に、持田さんはレースという環境の中で何を感じ、どんな手応えをつかむのでしょうか。
800mから始まった挑戦は、いよいよ最終章に近づいています。

