横浜マラソン完走を目指し、ランニングに挑戦中の元オリンピアン・持田早智さん。
800mから始まった挑戦は、90分走、120分走へと進み、いよいよ本番まで約1ヶ月となりました。
練習データを振り返りながら目標タイムも設定し、次はハーフマラソンを“模擬レース”として経験します。
本番が近づくほど、
「まだ距離が足りない気がする」
「一度くらい30km、40kmを走っておいた方が安心なのでは?」
と、不安になる方も多いかもしれません。
でも、ここから大切なのは、練習量を増やすことではありません。
初マラソンまで残り1ヶ月。
何を確認し、どんな状態で本番を迎えればいいのか。
ランニングマスターの髙橋良コーチに聞きました。
ランニングマスターの髙橋良コーチに聞きました。

初マラソンの目標タイムは、最初に決めなくてもいい
初めてフルマラソンに挑戦する方は、最初に、
「5時間で走りたい」
「6時間を切りたい」
と目標タイムを決めることが多いと思います。
でも僕は、目標タイムは最初から決めなくてもいいと思っています。
なぜなら、その段階ではまだ自分がどのくらい走れるのか分からないからです。
「友達が初マラソンを5時間で走ったから、自分も5時間」
という目標には、本人の走力を示す根拠がありません。
もちろん、結果的にちょうどいい目標になることもあります。
ただ、実力より高い目標を設定してしまうと、
そのタイムを達成するために普段の練習ペースまで速くなり、身体への負担が大きくなることがあります。
そのタイムを達成するために普段の練習ペースまで速くなり、身体への負担が大きくなることがあります。
場合によっては、途中で脚を痛めることにもつながります。
だからまずは、トレーニングを続ける。
自分がどのくらいのペースなら無理なく走れるのか。
その時、心拍数はどのくらいなのか。
そうしたデータや感覚が積み上がってから、本番の1〜2ヶ月前に目標を設定する。
それくらいで十分です。
長時間走で見るのは「何分で走れたか」ではない
持田さんは今回、120分走に挑戦しました。
僕から見ると、内容は120点くらいです。
でも、評価しているのは「速いタイムで走れたから」ではありません。
120分走はレースではないので、タイムそのものは重要ではありません。
一番見ていたのはペース配分です。
前半は少しゆっくり入る。
身体の状態を確認する。
余裕があると分かったら、少しずつペースを上げる。
持田さんはそれができていました。
もう一つ経験してほしかったのが、長時間走った時の気持ちの変化です。
最初は、
「まだ20分しか経っていない」
「まだ半分も終わっていない」
と思う。
ところが後半になると、
「意外とまだいけるかも」
と感じることもある。
こうしたメンタルの変化は、短いランニングではなかなか経験できません。
本番を迎える前に、
「長く動いた時、自分の身体と気持ちはどう変わるのか」
を知っておく。
それが長時間走の大きな意味です。
フルマラソン前に「模擬レース」を経験する
フルマラソンに初めて挑戦する方には、
可能であれば本番前に一度、
短い距離の大会を経験しておくことをおすすめしています。
持田さんの場合は、ハーフマラソンです。
ここで確認したいことは、大きく二つあります。
一つは、レースの雰囲気の中でも、自分のペースを守れるか。
もう一つは、大会ならではの動きを経験しておくことです。
普段の練習と大会は、全く同じではありません。
周りにたくさんのランナーがいる。
沿道から応援される。
スタート前から緊張する。
そうすると、普段より気持ちが高ぶって、
前半からペースを上げてしまいがちです。
だからこそ、
「今日はこのペースで走る」
という本来の目的を忘れずにいられるか。
心拍数や身体の感覚を見ながら、自分を落ち着かせられるか。
それを一度経験しておくことが、本番への大きな準備になります。
レースでは「給水する」ことにも練習が必要

もう一つ、普段の練習では経験しにくいのが給水です。
一人で走っている時は、立ち止まったり、
歩いたりして水を飲むことができます。
でもレースでは、多くのランナーと一緒に走りながら給水所へ入っていきます。
そこで、
「どこで取ればいいのか」
「どうやって飲むのか」
「周りの人とぶつからないためにはどうするのか」
といったことも、実際にやってみないと分かりません。
例えば、給水テーブルが並んでいたら、
入口側は混みやすいので、
少し先のテーブルを狙った方が取りやすいこともあります。
こういう小さなことも、本番で初めて知るより、
ハーフマラソンなどで一度経験しておいた方が安心です。
模擬レースの目的は、速く走ることだけではありません。
「大会って、こういう感じなんだ」
を身体で知っておくことなんです。
補給は「走っている最中」だけを考えない
長時間走るようになると、
「途中で何を食べればいいですか?」
「どのジェルがおすすめですか?」
という質問が増えてきます。
もちろん、走っている最中の補給も大切です。
でも、それと同じくらい大切なのが、走り始める前の準備です。
運動中にエネルギー切れを起こさないためには、
スタートする時点で身体の中にエネルギーがある状態を作っておく必要があります。
スタートする時点で身体の中にエネルギーがある状態を作っておく必要があります。
水分も同じです。
走り始めてから慌てて飲むのではなく、走る前から準備しておく。
エネルギーも、
「途中でゼリーを取れば大丈夫」
ではなく、
「走る前に何を食べたら、自分は気持ちよく走れるのか」
を普段の練習で確認してください。
例えば仕事が終わってそのまま走りに行くのではなく、
必要であれば羊羹のような糖質を少し取ってから走る。
そうした準備も、マラソンのトレーニングの一部です。
本番1ヶ月前に「30km走っておこう」はおすすめしない
ここからが、初マラソンを控えた方に一番お伝えしたいことです。
本番が近づくと、多くの方が不安になります。
「まだ42km走ったことがない」
「30kmも経験していない」
「一度くらい本番の距離に近いところまで走った方が安心なんじゃないか」
そう思って、直前になって30km走や40km走をやろうとする方がいます。
でも、僕はおすすめしません。
直前に無理に距離を増やしても、
つらい経験だけが残ってしまう可能性があります。
それまで積み重ねてきた練習があるのなら、
急に今までと違うことをする必要はありません。
急に今までと違うことをする必要はありません。
ポイントとなる練習は予定通り行う。
それ以外は、今まで通り。
生活の中で無理なく続けてきた人なら、
最後までそのリズムを崩さないことの方が大切です。
「もう少し走りたい」を、本番まで取っておく

マラソン直前になると、
「練習量が足りないんじゃないか」
「もっとやらないと不安」
と思うかもしれません。
でも、本番1ヶ月前、とくに最後の1〜2週間は、
「もうちょっと走りたいな」
くらいでいいと思っています。
その「もっと走りたい」という気持ちは、本番にぶつけてください。
本番当日に大切なのは、
「昨日まで頑張りすぎて脚が重い」
ではなく、
「早く走りたい」
と思える状態でスタートラインに立つことです。
未知の距離だから、不安になるのは当然です。
でも、エネルギーをしっかり蓄え、
身体を良い状態に整え、
前半にオーバーペースにならなければ、
自分が持っている力をきちんと発揮することができます。
身体を良い状態に整え、
前半にオーバーペースにならなければ、
自分が持っている力をきちんと発揮することができます。
だから直前になって、無理に何かを足そうとしなくて大丈夫。
練習は続ける。
でも、気持ちは腹八分目くらい。
身体も気持ちも、
「早く本番を走りたい」
という状態でスタートラインに立つ。
それが、残り1ヶ月で一番大切にしてほしいことです。
